誰もが認める 日本の温泉ジャーナリストの第一人者小森タケノリが語る本物の温泉とは。

本物の温泉を見極める〜温泉ジャーナリスト小森威典の温泉学

今のご時世で温泉の本物と模造との区別をさせない温泉業界になんとも腹立ちが収まらない。
今の日本では高度経済成長時に、われもわれもと温泉を掘ったために深刻な温泉不足にみまわれている。
またそうでないところも温泉の温度が高すぎるか、低すぎるか、に沢山の宿が頭を抱えてしまっている。

温泉が熱すぎれば水を足し、温泉が足らなければ水を足して、これは温度が低い温泉も同じだが、
循環濾過装置を使い沸かして循環させる。循環温泉は当然レジオネラ菌もドンドン繁殖してしまう。
そこで強い強いイソシアヌル酸を入れさせられる羽目になる。
温泉は空気に長く触れただけでもその効能が劣化してしまう。

源泉を生まれたままの姿で冬は43度前後で、夏は39~41度で湯船に入っている温泉宿なんか
指で数えるほどしかありやしない。本物の温泉は命懸けで守り育てる覚悟でやらないとできない代物だ。
本物温泉は全国約13,000軒の中で1%前後しかない貴重なものなのだ。
私は長年現役のフリーのテレビプロデューサーで今まで120本以上放送してきて日本テレビで流した温泉番組で3年間、視聴率を15%切ったことのない記録まで作った男である。

温泉旅行者は年間1億3000万泊している、その人たちは本物温泉を探して温泉に行っている。

書かねばならない、本物の温泉とはどういったものか書かねばならない、
このまま皆さんが高いお金を払って騙されているのを見ているだけではやりきれないのだ。

全国の温泉をこの足で歩いて

温泉イメージ

私は40年にわたり全国各地の温泉を 源泉の湯元から浴槽までの全配管を
自分自身の足で歩き配管途中で何をしているのかを
しっかりと見て来た日本でもただ1人の男として自負している。
そこの温泉宿で公表されている(浴槽内の泉質ではなく)源泉の湯元の泉質だけを見て
ウンヌンしている評論家とは年季も経験も違う。

食品偽装と同じで見た目には同じように見えても
「本物」と「偽物」の中身は真逆と言えるほど違うのだ。
本物の温泉は本当に身体に良いものだ。「源泉かけ流し100%」温泉を求めることは、昔から体へのご褒美として珍重されている。
だからこそ本物の温泉と言えるのだ。

小森 威典
小森 威典 (こもり・たけのり)
1936年神戸市生まれ。新劇の役者として30年以上活動。 1985年にテレビ制作会社を設立。NTV、NHKなどで多数制作。
ギャラクシー奨励賞、通産大臣賞受賞。源泉探検隊結成。旅チャンネルでは「野口悦男のからだにいい源泉の旅」「からだにいい五つ星源泉の宿」「あった!これが本物の源泉宿」などの番組制作に携わる。

本物の温泉」と
偽物の温泉」の違いとは?

湧き出たばかりの新鮮な温泉が「本物の温泉」であることは誰もが納得するところだろう。本物の温泉として、まずは「源泉かけ流し100%」ということを条件としたい。しかし 日本の各温泉地の現状は使用量に対して温泉の湧出量が絶対的に不足している。

そこで活躍しているのが少量の温泉でも浴槽の大きい大浴場が造れ、
さらに、お湯の入れ換えなしに汚れを除去できる循環濾過装置だ。(図1)
これはホテルや旅館側にとって時間と人件費節約を兼ねたとても都合のいい設備といえる。循環方式は温泉を何度も再利用するから少ない温泉でもOK。しかも大幅に人件費も削れる。

(図1)循環濾過装置の流れ

全国のほとんどの温泉での悲惨な現状

人の皮脂や汗などを除去できない
循環濾過装置ではお湯の中の髪の毛やゴミなどは除去できるが
人の皮脂や汗は除去できないため、皮脂たっぷり温泉になっている。
換水は週に1回以上
厚生労働省の法令のもと、温泉の換水は週に一回以上でOK。
純度が1%でも温泉といえる
加水量を規制する法律がないため、純度が1%でも温泉といえる。
少しの掛け流しだけで「源泉掛け流し」と唄える
ほとんど循環なのに、少しでも掛け流しを加えていれば“源泉掛け流し”と唄える。
大量の塩素を添加している
人の汗や皮脂でレジオネラ菌が大量に発生するので、大量の塩素を添加する。
美肌の湯ではなく美肌天敵の湯。
温度が低下するので加温
上記の工程の後浴槽に戻す

つまり、循環濾過装置で異物は取れるが、使い回した温泉には他人の皮脂と汗と塩素の融合物がいっぱい。
さらに厚生労働省で定めた法令では、温泉の換水は週に一回以上であればOK。
これはプールではなく温泉の話である。
他人の皮脂がいっぱい残り、一週間もお湯を替えない温泉(お風呂)。
従って肌がカサカサになる塩素系消毒薬をたくさん入れ続けなければならない。

これははたして「温泉」と呼べるものなのだろうか?

「食品偽装」はあるのに
温泉偽装」はないの?

浴槽いっぱいの水に純度1%にも満たない少量の温泉を加えただけでも「天然温泉」と称する温泉が出来上がる。
こんな温泉のかけらすらも見つけることができない「薬剤皮脂汗入りで温泉 純度が何%か判らない加熱温泉」がほとんどである。”天然温泉“や“源泉掛け 流し”という看板に騙されてはいけない。こんな現実を知れば健康のために 捨てるようなお金は払いたくない。これなら毎日入れ替える自宅の風呂の方 がよっぽどましだ。これが「循環温泉」の本質。
本物の温泉とはいつでも身体に良い 新鮮な加水なしのたっぷりなお湯が循 環なしでかけ流され、浴槽から溢れ流れたお湯は決して一滴も浴槽に戻さないことなのだ。

だからこそ本物の温泉として昔から体へのご褒美として珍重されているのだ。

  • 源泉はちょろちょろ。お湯のほとんどは加温循環。
  • 浴槽に溜めた温泉水だけで加温循環。